経営のツボ「情報を出す側にまわれ」
2016/04/30
2ヶ月に1回程度、釧路新聞「経営のツボ」欄に寄稿しています。
今回はマーケティングのお話。「情報を出す側にまわれ」です。
私は今でこそ経営コンサルタントなんて固い?商売をしていますが、大学を出てすぐに就職もせずにススキノでバンドマンをやっていました。それだけでは食えないので生活のために色々なアルバイトをしました。初めてやったのが札幌駅前の五番館という百貨店の前で夏場だけの観光客相手の民芸品売りの店員でした。
店員なんてやった事もなく、店先でボーっと突っ立っていたら店長だった社長の奥さんから「乗山君、何やっているの、いいかい、こうやってやるんだよ」と言って、ペンダントを選んでいるお客さんに話しかけて見事に売ります。自分も見よう見まねでお客さんに近づいて「いかがですか」と声を掛けると、「これとこれ、どちらが良いかしら?」と質問。とっさに「こちらの青い方が良く出ますよ」などといい加減に応えると「じゃあ、これ3つ下さい」と言った調子で売れるではありませんか。面白くなって、見ているお客さんのタイミングを見計って声を掛けるとどんどん売れます。当時、熊の木彫り(もらった方は結構迷惑)は5万円以上したと思いますが、同じ要領で声をかけると、中年のオジサンたちが多かったのですが、かなりの確率で買ってくれ、ひと夏の新記録を作ったほどです。
一方、4店並んでさっぱり売れない店もありました。どこに違いがあるのか観察しているとすぐ分かります。売れない店の店員はお客さんが商品を見ていても何も声をかけないのです。「商売ってものの良し悪しより、情報を伝えるか否かで決まるんだ」と思い、それが原体験になっています。
マーケティングの教科書に必ず載っているAIDMA理論というのがあります。
これはお客さんの購買行動に至る心理の過程を説明し英語の頭文字をとったものです。お客さんは最後の⑤購買行動に至るまで、まず最初に①気付く(注意を喚起)→②興味を持つ→③欲しいと思う→④一度記憶に留め後で思い出しやっぱり買おうと思う→⑤買いに行く、といった心理過程を辿ります。
私が熊の木彫りを見ているお客さんに話しかけて勧めたのは①Attention(注意)②Interest(興味)の部分で情報を伝える行動にあたります。
例えば「昼ごはんをどの店で食べようかな?」とお客さんが考える時、最初から「△△ラーメン店に行こう」などとと考える事はまずなく「どこに行こうかな」と普通は迷います。お客さんは食事なんてどこで取っても良いのです。つまりお客さんは基本的にあなたの店の事を忘れているのです。
忘れられたあなたの店を思い出してもらう(④Memory)には注意(①Attention)を喚起し、興味(②Interest)を持ってもらう必要があります。そのためには自社の存在を伝える必要があります。店舗の看板やPOP、声かけ、チラシ、DM、新聞広告、ホームページ、ブログ、メルマガ、新聞記事など使って伝えるのです。
お客さんの80%がインターネットを使う時代になりました。アンドロイド携帯等の普及で更にその割合は増えて行きます。でも情報を受けるだけではダメ。これから企業が生き残る方法がただ一つあるとしたらそれは「情報を出す側に回れ」という事ではないかと思う今日この頃です。さあ、情報を出して思い出してもらいましょう。
乗山徹
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