北の漁場は大丈夫か?
かつて釧路港は日本一の水揚げ量を誇る水産基地で、僕が習った中学校の地理の教科書にもその旨記載されていました。
今はその全盛期の10分の1だと言われています。
その最大の原因は82年に漁業の国際ルールが変わって各国の200海里水域内で他国の漁船が自由に漁獲することが禁止されて、いわゆる遠洋漁業が出来なくなったためなのです。
かつての水産王国釧路の基幹産業である漁業は大きく打撃を受けて今に至る。さらに、ここ数年はサンマや鮭、ホッケなどの近海漁業も、地球温暖化や外国船の乱獲により、一体どうしたんだろうという程、魚が獲れなくなっています。
昨日、中小企業家同友会くしろ支部一歩の会の企業見学会は、釧路の水産の元気企業である(有)釧路フィッシュにお邪魔しました。
平野社長の話は、まさに釧路、日本の漁業の現在と未来を理解するのに、これまで目にしたどのメディアの記事より、分かり易いものだったのでここに紹介したいと思います。
(有)釧路フィッシュは平成12年に創業して、平野さんは創業と同時に入社し、最初の5年間はデンマーク、フィンランドに冬場にトラウトサーモンの養殖現場に派遣され、その後アラスカに10年ほど夏場に派遣された経験を持っています。
元々カナダやヨーロッパでは魚卵を食べる習慣がなく全部捨てられていたものを、遠洋漁業の減船で仕事が無くなった日本人が現地に赴いて指導し始めて商品化されるようになったとのこと。
平野さんは、そこで日本の漁業と欧米の漁業の根本的な違いに気付いたと言います。
なぜ欧米の漁業は安定しているか?
それは、「増えた分だけしか獲らない」方式の資源保護を徹底して行っているから。
今でこそ、台湾や中国船が公海で資源を乱獲気味に獲りあさっていますが、世界中の海に出かけてそれをずっとやってきたのがまさに日本なのです。
だからサンマの公開での漁獲のルールを国際的に決めようという日本の提案に対して、他国からは「ずっとやってきたのはお前だろう、今更あんたらに言われたくないよ」と中々聞く耳持たず、時間がかかるだろう、ということらしいです。
今、サンマだと釧路や根室の沖で獲ったら日帰りで近くの港に卸しセリをかけて全国に流通するのですが、国土の広いカナダ、アメリカはじめ日本以外の国では鮮魚流通という概念が元々ないのです。
基本的には獲った魚は洋上の加工船で加工して凍結をかける加工冷凍が当たり前。
だから、漁獲船、加工船、すり身加工する船、ミール船など分業制で洋上が大きな水産加工団地の船団になっている。
近海で魚が獲れなくなっている以上、加工冷凍の道も考えなければならないのかもしれません。
それと鮭が近年激減している問題についても、いまは稚魚を放流させるふ化方式ですが、生態系との関係も未だ解明されていないことが多く、果たしてふ化方式が正しいのかどうかも分からない。
養殖方式に移行すべきという意見もあるが、結局養殖に使うエサは魚が原料のミールであり、全体量としては変わらないので、真の解決策となるか疑問。
いずれにしても日本の漁業が大きな曲がり角に来ているのは間違いないようです。
今年のサンマは食べるのが可哀想な位に小っちゃくて、地元ではこれをジャミと呼んでミール加工に回していたのですが、食卓に上る度に「大丈夫かな・・日本の漁業」と不安な思いが、平野社長の話を聞いて、少し雲が晴れた気がします。
ちなみに釧路フィッシュでは、小型化する原料に対応して、スティック製品にしたり、フレーク製品に加工したり、環境に対応した商品開発に余念がないようです。
北の漁場はよ~男の仕事場さ~♪
って関係のないフレーズで終わります。
長文、読了ありがとうございます!
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乗山徹
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