あの時別な道を選んでいたら・・

2014/09/16 2016/04/03

昨日、エクスマの後輩で帯広の進藤厚広君のブログを見て、「これは捨て置けない記事だぞ」と思い書いています。
多分ず～と売れ残っていた熊の木彫りに白いペイントを施してパンダにしてしまったというメチャ楽しい話なのですが、実は僕には熊の木彫りに対してある種因縁めいた過去があるのです。

昔、バンドマンをやっていた頃、夜のバンドマン収入だけでは生活出来ず、昼間のバイトを始めました。これが今思うと僕の商売の原体験となった民芸品店だったのです。当時は、まだ団体旅行が主で札幌駅の真ん前にあった百貨店入口に設置された露店では観光客に飛ぶように土産物が売れました。小物のペンダントからお菓子、木彫りのアイヌエカシやメノコのタテなど数ある中で最も高額で頂点の売れ筋商品がこの「熊の木彫り」だったのです。
熊の木彫りって、昔はどの家庭にも茶の間に飾ってあったりしてそう違和感なかったのですが、今だと結構邪魔というか、もらって迷惑な北海道土産の代表選手かもしれませんね。
高度成長時代の北海道観光ブームの時代には、熊の木彫りが飛ぶように売れた時代があったらしく、当時はまだその名残が残っていて土産店の商品アイテムの頂点として君臨していたのです。
実は、僕の叔父は戦後、釧路市で木彫りの民芸品の製造メーカーを立ち上げ、昭和の時代は飛ぶ鳥を落とす勢いでした。その血を引いているのかどうか、意外と僕も彫刻刀を持たせたら器用で、お客さんのペンダントの裏や熊の木彫りの台に彫刻刀で、記念の文字を入れたりして重宝がられていました。
それを見ていた隣の店の木彫り職人のヒゲを生やした店長さんが「お前、中々才能あるよ、俺の弟子にならんか。熊の木彫りも一時ほどじゃないけどまだまだ売れてるし、一財産稼げるぜ」って何度も誘われました。いかに単価が高くて割りの良い商売かというのを何度も聞かされました。当時２３歳の僕は、それほど素敵な職業とも思えず、音楽でメシを食っていこうという最中だったので、もちろんお断りしました。まあ、その職人の店長が（当時３０代位）、何となくヤクザッぽくてダラシない感じの人だったんで、こんな風な生き方は嫌だな～ってのもあったんですけどね。

もしあの時、熊の木彫り職人になっていたら今頃どうなっていたんでしょうか？あんなに勢いのあった僕の親戚も、北海道観光ブームも終わり世の中の景気に連動してすっかり儲からなくなり、結局廃業してしまいました。熊の木彫りも今や迷惑商品の代表みたいに見られて売れなくなり、ホコリを被ったあげくパンダに姿を変えられる（笑）惨めさです。あの時僕に木彫り職人を勧めてくれたヒゲの店長さんは、今どうしているのかな～・・・。
熊の木彫りと聞いて、あまりにも変わってしまった世の移り様を、僕の青春のノスタルジアと共に思い出すのでした。
木彫り職人じゃなくて良かった～（笑）。

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